PLCを動かすだけでなく、設計意図を残すことの大切さを伝えたい。
PLCプログラムの新規設計だけでなく、既存設備の解析、改造、更新、メーカー間置換に携わる中で、正常に動いているプログラムであっても設計意図が共有されていなければ、引き継ぎや更新時に大きな負担になることを経験してきました。
「はじめてのPLC制御設計」は、こうした現場経験と汎用機、PCアプリケーション、組み込み制御など、異なる分野で培ってきたソフトウェア設計の経験をもとに構成した講習です。
講師プロフィール

菊地 勉
有限会社シーテック 代表取締役
汎用機を用いた業務システムから、PCアプリケーション、マイコン・組み込み制御、PLC制御まで、さまざまな分野のソフトウェア開発に携わってきました。
現在は、PLC制御システムの設計、既存プログラムの解析・改造、老朽設備の更新、異なるPLCメーカー間の置換などを中心に取り組んでいます。
ソフトウェア開発の基盤となる経験
- 汎用機を用いた業務システムの設計・開発
- PCアプリケーションの設計・開発
- マイコン・組み込み制御ソフトウェアの開発
- データ処理、画面、通信、制御を含むシステム開発
- 複数のプログラミング言語を用いたソフトウェア設計
PLC・制御分野での実務経験
- PLC制御システムの新規設計
- 既存PLCプログラムの解析・改造
- 老朽PLCを使用した設備の更新
- 異なるPLCメーカー間のプログラム置換
- ラダー、ST、FB、SFCを用いた制御設計
- 状態管理、構造体、共通FBを用いたプログラム設計
- PLCとHMI、PC、ロボット、周辺機器を組み合わせたシステム開発
- PLC技術者向けトレーニング
主な開発言語・制御言語
COBOL、PL/I、C、C++、VB.NET、アセンブリ言語、ラダー、ST、SFCなど、業務システムから組み込み制御、PLC制御まで開発対象に応じてさまざまな言語を使用してきました。
言語そのものよりも、役割分担、責任範囲、状態管理、インターフェース、データ設計といった分野を越えて必要となる設計の考え方を重視しています。
異なる分野の経験を、PLC制御設計へつなげる
汎用機やPCアプリケーションの開発では、プログラムを機能ごとに分け、データやインターフェースを定義し、設計内容を仕様書として共有することが一般的です。
組み込み制御では、限られた資源の中で、機器の状態、処理の順序、異常時の動作を明確に設計する必要があります。
一方、PLCの現場では、既存ラダーの流用や設備ごとの調整が優先され、設計意図がプログラムの中だけに残ることがあります。
本講習では、他分野の設計方法をそのままPLCへ当てはめるのではなく、PLC現場の特徴を踏まえ、シリンダ、搬送、状態管理、FBなどの具体例へ置き換えて説明します。
異なる分野で培った設計の考え方を、PLC技術者が現場で使える形へ整理して伝えます。
この講習を作った理由
PLCの現場では、正常に稼働していることが最も重要です。そのため、まず設備を動かし、必要に応じて既存プログラムを流用しながら改造する方法には十分な合理性があります。
しかし、設計判断が個人の経験に依存したままでは、担当者の変更や設備更新の際にプログラムを一から解析し直さなければならないことがあります。
また、共通FBを作成しても責任範囲やDoneの意味、信号の方向、データの書き込み責任が共有されていなければ、利用者ごとに異なる周辺回路が追加され標準として定着しません。
こうした問題は、設計者の能力が不足しているからではありません。現場で培われた優れた判断を共有するための言葉と仕組みが不足していることが原因の一つだと考えています。
「はじめてのPLC制御設計」は、経験の中にある設計判断へ名前と理由を与え、他の人へ説明できる形へ整理するために作りました。
現場経験から感じてきたこと
動いていることと、設計意図が共有されていることは別です
長年正常に稼働してきたプログラムでも、なぜその構造になっているのかが分からなければ、更新や改造の際に多くの解析が必要になります。
正常に動作することは重要な品質です。それと同時に他の人が設計意図を理解できることも、長く設備を使い続けるための品質だと考えています。
FB化することと、標準化することは同じではありません
既存ラダーをFBの中へ移しただけでは外部から多数の内部信号を入力しなければ使えない部品になることがあります。
FBが何を担当し、どこまで完了として保証するのかを決め、外部との約束を明確にして初めて再利用しやすい制御部品になります。
ベテランの経験には、共有するための言葉が必要です
熟練した技術者は、回路を見ながら無意識に役割や影響範囲を判断しています。
その判断を役割、責任範囲、状態、インターフェース、高凝集・低結合などの言葉で説明できるようにすると若手への教育や設計レビューで共有しやすくなります。
標準化は、設計者の自由を奪うためのものではありません
標準化の目的は、すべての設備へ同じラダーを押し付けることではありません。
熟練者が行っている優れた判断を他の人が理解し、再現し、さらに改善できる形へ変えることが標準化の役割だと考えています。
講義で大切にしていること
受講者がこれまで行ってきた設計や、既存プログラムの流用を一方的に否定する講習にはしません。
現場の制約や納期の中で設備を動かしてきた経験を尊重し、その経験へ新しい視点と言葉を加えることを大切にしています。
- これまでの経験や設計方法を一方的に否定しない
- 一般論だけでなくPLC現場の具体例を使って説明する
- 用語を覚えることより設計判断へ使えることを重視する
- 一つの正解を押し付けず判断した理由を考える
- PLC経験者にも新しい気づきが得られる内容にする
- 質問や意見を通じて受講者自身の経験と結び付ける
- 講習後に自社のプログラムを見直せる視点を持ち帰ってもらう
講師からのメッセージ
PLCプログラムを組み、実際の設備を動かしてきた経験はそれ自体が大切な技術です。
その経験へ役割、責任範囲、状態、信号、データという視点を加えることで、個人の中にある判断を他の人が理解し、再利用し、改善できる設計へ変えていくことができます。
この講習では、これまでの方法を否定するのではなく、受講者の皆様がすでに持っている経験を整理し、設計として説明できる形へつなげたいと考えています。
本講習が、個人の経験を次の世代へ伝え、会社の設計資産へ変えていく最初のきっかけになればと思います。
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